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BOIからの最新情報 OIE:経済成長の概況

02/04/2014

現在の世界経済を12ヶ月前と比較すると、はるかに健全さが増したように見えます。当時は米国における「財務の崖」、欧州の不景気、中国経済の均衡回復をめぐる懸念により世界全体の成長予測が鈍化し、世界各国の景況感が財政危機以来の最低水準に落ち込みました。さらに、2013年には開発途上国経済の成長率も低下しましたが、2014年は先進国より高い率での拡大が見込まれています。しかし、この世界経済の見通し改善は、ユーロ圏の脆弱さだけでなく、米国連邦準備制度の大規模な量的緩和政策の縮小によって困難なものになります。2013年の中頃には、金融引き締めの可能性が取り沙汰されたために、新興国市場の多くは悪循環に陥りました。世界経済の均衡を回復させる動きが始まっていることに疑いはなく、2014年がどのような年になるかは、この動向によって決まることでしょう。

工業省の1部門である工業経済局では、タイ経済に関する年次報告書を取りまとめ、2013年における業界別の経済成長について概要をわかりやすく示しています。また、2014年に向けた各業界の動向についても明らかにしています。タイ工業のいくつかの主な業界の大まかな概要、現況と見通しを以下に具体的にご紹介します。

鉄・鋼鉄

2013年における主要な鉄鋼製品(二重計算を避けるために鉄の半製品、冷間圧延鉄板、めっき鋼材、鋼管・管材を除く)の生産量は、合計705万41トンで、前年同期比で4.90%増加しました。これは、建設業界の成長が続いたこと、特に民間部門のプロジェクトの貢献によるものです。例えば、大量輸送鉄道路線の沿線におけるコンドミニアム建設プロジェクトは依然として高い人気を集めています。世界経済の落ち込みのために、世界の鉄市場の景気が後退したものの、中国、インド、韓国など、製造業の盛んな国は、国内における消費が減少したにもかかわらず、生産量を拡大させました。その結果、これらの国の大手製造企業は製品をアセアン諸国に製品を輸出し、その格安な価格設定によってタイの製造企業に影響を及ぼしました。2013年における主要な鉄鋼製品の輸入額は3,424億2900万バーツで、2012年に比べて6.76%増加しました。輸出額は318億800万バーツで、前年同期比で14.73%減少しました。2014年におけるタイの鉄の需要量は、タイのマクロ経済的な条件により増減するものと見込まれます。

電化製品・電子機器

電化製品・電子機器業界は2014年に前年度比2~3%の低成長が見込まれます。電化製品分野は、アセアン市場およびアジア市場への輸出が好転するため、1%成長すると予測されています。しかし、国内市場は低迷が続く見込みです。電子機器分野は、継続的に拡大する米国市場の需要により、3%の成長が予測されています。日本の電子機器業界において2013年の末に生産指数の見通しが改善しましたが、これは2014年に向けての好ましい兆候といえます。

半導体工業会は、2014年における世界の半導体販売額が3,160億ドルに達し、2013年に比べて4.1%増加するとの予測を明らかにしました。米国、日本、アジア太平洋、欧州連合など、すべての主要市場ではそれぞれ6.5%、3.8%、3.7%、1.8%の割合で成長が実現しています。

自動車

自動車業界では、2013年1月から10月までの10ヶ月間に生産台数と販売額がいずれも縮小しました。輸入は減少しましたが、輸出はわずかに増加しました。2013年を通年で見ても、この傾向は変わりません。自動車メーカーの生産計画に関するデータによると、2014年における自動車生産台数は約260万台に達し、国内販売が50~55%、輸出が45~50%を占めるものと見込まれています。

2013年1月から10月までの10ヶ月間におけるオートバイの生産台数、販売台数および輸入台数は、2012年同期比で減少しました。その一方で、輸出は拡大しました。2014年の二輪車業界は、2013年と比較してあまり変化がないものと見込まれています。二輪車メーカーの生産計画に関するデータによると、2014年におけるオートバイの生産台数は241万5,000台に達し、国内販売が約85~90%、輸出が10~15%を占めるものと見込まれています。

石油化学

2013年におけるタイの石油化学業界は、2012年と比較してわずかな成長が予測されていました。主な要因は、タイの景気、およびタイにとっての輸出市場であり、成長が拡大しつつあった中国や日本などの経済状況でした。しかし、欧州と米国の経済が不安定なことが、引き続き重要な監視要因となりました。短期的には、石油化学業界の製造企業は国内および世界の経済状況に応じて生産計画を調整しました。長期的には、リスクを最小化するために新たな開発途上国の市場、特に新興国市場を開拓する必要があります。

2014年の石油化学業界は、中間産業および下流産業、すなわちプラスチック、電化製品・電子機器および自動車の各業界の成長に応じて成長が見込まれます。タイ政府による2013年の奨励策が実施されていれば、国内の多数の業界で大幅な成長が実現していたことでしょう。しかし、欧州連合と米国における経済問題と不安定要因のほか、タイ国内の政治的な不安定さが重要な要因であり、これらを注意深く見守る必要があります。

セメント

セメント業界は、国内におけるセメント消費の拡大が続くため、2014年も継続的な成長が見込まれます。公的部門によるインフラシステムへの投資によりセメント需要が大幅に拡大することはないかもしれませんが、大量輸送鉄道路線の建設プロジェクトにより、民間部門がこれらの路線沿線の不動産プロジェクト、特に大量のセメントを必要とする高層住宅やコンドミニアムへの投資を拡大させることが可能になります。2014年におけるセメントの国内消費量が拡大すれば、セメントメーカーによるセメント輸出量は減少する可能性があります。メーカー数社は、国内消費量の拡大に対応するために、国内の生産能力を拡張しました。国内消費量は2014年に10%の増加が見込まれていますが、主な輸出市場、特にミャンマーでは変化がないものと予測されます。

医薬品

2014年における医薬品の生産および国内販売は拡大が見込まれますが、これは政府による厳格な支出制限により、価格の高い輸入医薬品が国内生産可能な医薬品に置き換わり、医薬品の国内生産が部分的に増加するためです。

2014年における医薬品輸出は、欧州連合のGMP(製造管理および品質管理に関する基準)または主要貿易相手国のPIC/S(薬事監視協力計画)の要件に従って医薬品メーカーが製造プロセスを調整する必要があるため、減少が見込まれています。2014年における医薬品の輸入は、主な顧客である公立病院が国内で生産された医薬品の使用を拡大するために、高価な輸入医薬品への支出を延期したことから、わずかに減少するものと見込まれています。

ゴム・ゴム製品

2014年におけるゴムおよびゴム製品の業界は、国内の自動車産業の成長が続くため、特に自動車タイヤの分野が成長するものと予測されています。清掃用・検査用のゴム手袋は、欧州連合などの主要市場が低迷しているものの、アセアン市場の成長が見込まれるため、従来の市場への輸出減少が補われます。インド、ベトナム、ブラジルなど、自動車産業の成長が続いている国では、ゴムの需要が高止まりとなっています。これも、ゴム業界へのマイナスの影響を和らげる好ましい要因です。

2014年におけるゴムの価格は、予測が容易ではありません。主なマイナス要因としては、先物取引所における取引価格と原油価格の低下のほか、現在継続中の欧州連合と米国における経済危機が挙げられます。これらの要因により、ゴムの消費量は低迷と減少が続いています。

食品

食品業界は2013年度中、2012年とおおむね同じ水準で推移しましたが、これは賃金や給与が増えて一般消費者の購買力が高まった結果、国内需要が拡大したことによります。価格は上昇したものの、ほとんどの生産量は、砂糖の生産量を除いて2012年と同水準に留まりました。海外の要因を分析すると、タイの食品の主要市場である欧州連合の景気低迷によって、多数の製品の生産と輸出が影響を受けました。

2014年における食品業界の生産および輸出は、世界経済の回復に伴って拡大するものと予測されます。日本や中国などの主な輸入国は、世界的な債務危機からの景気回復が進みつつありますが、欧州連合については、同じ状況にあるとはいえません。米国についても、ホワイトハウスと議会との間で進行中の政治交渉、および債務上限の引き上げが承認されるか否かを注意深く見守る必要があります。タイ国内においては、公的部門による大規模な支出により多少のメリットが得られる可能性があります。このため、国内の消費量が大きく減少することはないと考えられます。しかし、タイにおける現在の反政府デモが長引いた場合、政治的な難局の影響を考慮に入れる必要があります。今後、生産の拡大が見込まれる分野としては、特に加工済みまたは生の鶏肉などの家畜生産品、水産物、野菜と果物、および砂糖製品が挙げられます。

出典:Thailand Investor Review, March 2014, Volume 24, No. 3

http://www.boi.go.th/tir/issue_content.php?issueid=109;page=0

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